海外ドラマ「FARGO」
この記事はこのブログのはじめての記事です。
どれから書いたものか、迷うほどいろんな海外ドラマを見てきましたが、結局、印象に残っているのは、情緒性が高いものです。
メジャードラマですが、いきなりマニアックなところから攻めてしまいました。
ドラマ全体だと、これを読んでいる人に追体験してもらいにくいので、シーン単位での紹介です。
第二シーズン第一話の冒頭シーン
FARGO、第二シーズン第一話のタイトルが「レーガンを待ちながら」なんですね。
この第一話の冒頭シーンは、不条理演劇の名作「ゴドーを待ちながら」のパロディになっています。2人の男が画面で話してて、実際に待ってるレーガンは現れないんです。
ただ、これを書いてて初めて、すんごく重要な事実に気づきました
原題が「レーガンを待ちながら」じゃないんです。
「Waiting for Dutch」
オランダ人を待ちながら・・・そんなひどい(T_T)
劇中の台詞で2人の男が待っているのは、本当にレーガンなんですけどね。
(Dutchになっている理由が判明したので最後に追記しますね)
ロナルド・レーガンとは
元合衆国大統領のロナルド・レーガンです。
1980年から8年間、大統領でした。彼がとった経済政策にレーガノミクスという名前がついており、アベノミクスはそのオマージュというか、劣化コピーというか、犬がご主人様に尻尾振ってる感じです。
メディアでは全然言いませんけど、アベノミクスの数年間で日本人の一人あたりGDPは2割ぐらい下がっていて救いようがないので、結果は天と地ほどの差がありますけどね。
経済政策としてのレーガノミクスを描いた映画とかあるのかな?あったら別エントリで書きたいな。教科書にも載っていた「ニューディール政策」の流れをストレートではないにせよ、ある程度汲んでます。
「 レーガンを待ちながら」はサブタイトルと冒頭シーンが秀逸な理由
原語よりも吹き替えのほうが面白い海外ドラマ、海外映画は自分が知っているだけでも結構あります。タイトルも同じで、丁寧に作ってある海外ドラマの場合、やはり日本人向けになっていることも多いわけです。
この日本語訳サブタイトルが秀逸な理由を挙げます
- FARGO第二シーズンの舞台は1979年であり、1980年からアメリカ大統領をするロナルド・「レーガンを待ちながら」という時代にピッタリ符合する。実際、シーズン中も大統領選で遊説中のレーガンが何度も出てきます。
- ロナルド・レーガンのキャリアはもともと映画俳優であり、カリフォルニア州知事を経て、大統領になっています(シュワちゃんと似ているけれど、シュワちゃんは移民1世なので大統領にはなれない)。レーガンは大根役者で知られていたけれど、かっこよかったので主役に何度も抜擢されていて、そのうち西部劇映画の戦場撮影シーンで「レーガンを待ちながら」2人の男が話しているシーンからこの第一話が始まっている
- 劇中で出てくる西部劇映画のタイトルは「スーフォールズの大虐殺」これはこの第二シーズンの舞台がスーフォールズだからだ。サウスダコタ州でおこったインディアンが白人によって虐殺された「ウンデット・ニーの虐殺」をモデルにしていると考えられる。FARGOは主に(特に第一シーズンは)ミネソタ州の話だが、第二シーズンはサウスダコタ(スーフォールズがある)、ノースダコタ(FARGOがある)、ミネソタ(ダルースがある)の3州にまたがっていて、シーズン最後に向けて盛大な殺人劇が繰り広げられる
- この撮影シーンはその有名な虐殺の戦場で行われているとのことでサウスダコタ州であることも暗喩されている。
- このシーンは現場を仕切るユダヤ系白人と、日本語でインディアンと呼ばれる出演者のアメリカ先住民族系の2人の会話だが、(第2次世界大戦を子供の頃に経験したであろう)ユダヤ系白人が自分の人生と、先住民族の虐殺とを照らして不用意に民族迫害の話を持ち出しており、21世紀アメリカの現代的視点ではかなり扱いづらいポリティカル・コレクトネスな会話に踏み込んでいて、不思議な空気に包まれるのを表現している。
- 「オランダ人を待ちながら」と直訳しても(なにかアメリカ人には符合する意味があるのかもしれないけれど)、日本人には何のことかわからない。レーガンなら結構な数の日本人が知っていますからね。調べてみてもレーガンはオランダ系でもなく、ミドルネームにもダッチなどとは入っていません。
(謎が解けました。いずれ追記します)
監督はコーエン兄弟
全部で3シーズンあり、それぞれ別の時代になっていますが、登場人物の一部が時間違いで絡んでいます。オムニバス形式の基本的な様式ですね。
海外ドラマはテンポが早いものが多く、情緒性となると場合によってはお留守になっていることも多いのですが、こと、このFARGOについては、アップテンポな物語の展開中にところどころ忘れずに微妙な空気感を描ききれていて、情緒性はかなり強めの海外ドラマと言えます。
台詞のない空白の一瞬の緊張感がすご~くうまく描かれている作品と言えるでしょう。
第二シーズンから見ても十分に楽しめますし、ほぼ問題ありません。Netflixにも全話あります。
英語のみですし、どっかのいい加減なアップロードであれば、冒頭の広告を我慢すれば
です。画面が左右逆になってる気はしますが・・・
Dutchの理由
公式自叙伝のタイトルになっているのでした。
理由は、彼が小さい頃、お父さんからつけられたあだ名がDUTCHだったからというもの。同時代のアメリカ人なら知らない人がいないぐらいの彼の愛称のため、この場合も、DUTCHがレーガンと置き換えて使われているとのこと。
だから、日本語訳で「レーガンを待ちながら」は正解なのです。
https://www.amazon.com/Dutch-Memoir-Ronald-Edmund-Morris/dp/0375756450
追記「このエントリ大変でした」
この作品に限らず、コーエン兄弟のは暗喩が多く、調べ始めるといろいろ大変でした。
しかも日本語ブログに載ってないんですな。
たぶん、FARGOのこの話に関して、日本語でこのエントリ以上に詳しいエントリはないと思います。マッチーが解説するレベルのはずw